授業科目名 | 知的財産法Ⅰ(総論・商標法等) |
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配当年次 | 2024 |
単位数 | 2単位 |
授業担当教員 | 佐藤 恵太 |
履修条件 | なし。 |
科目の目的・到達目標 | 商標法・不正競争防止法に関連する紛争について質問されたときに、どの法律のどのあたりの条文かを見極める力を育成し、標識法系の典型的紛争に関する解決手法を習得することを目的とする。そして、具体的に第三者(素人のクライアント)に対してすらすらと説明することができる程度に、この科目の範囲の知識を整理して運用できるようにすることが到達目標である。同時に、不正競争防止法は、法解釈の基本的手法=条文の運用方法を鍛えるのには良い素材なので、解釈能力を高めていくことも、当面の目標である。 |
授業の概要 | 知的財産法の体系(知的財産基本法、特許法、実用新案法、意匠法、商標法、種苗法、著作権法、著作権等管理事業法、半導体集積回路の回路配置に関する法律、特定農林水産物等の名称の保護に関する法律【地理的表示法、これはいわば商標法の応用立法である】)の全体像と典型的裁判例を学ぶことによって、日本法における知的財産関連紛争の基本的な解決手法を学ぶ知的財産法講義(Ⅰ~Ⅲ)のうち、導入部として、全体像を鳥瞰する(当初1回程度)。その上で、実務上で多く問題となる標識法(商標法と不正競争防止法の標識法分野)を中心に講義を行う。 【授業手法の特徴:具体的解釈論の訓練場】 授業は、具体的設例の解決を通して各種概念を理解してもらう手法を採用する。過去の受講生からは、これほどライブな授業は珍しいと評価を得ている手法である。その意味では、実務的な色の濃い知的財産領域の中でも本講義の範囲は、もっともロースクールらしい授業と位置づけられる(授業は、米国のロースクールで多用されるレクチャーメソッド【用語等の主要事項を最初にレクチャーし、その後に、事例を質疑応答してゆく方式】による)。そのため、解釈論の具体的な方法に習熟する極めて良い機会となるはずである。不正競争防止法2条1項1号の解釈論のみに4~5回を費やすのは、解釈論の基本的な技法をそこで鍛えてもらいたいという、担当者の強い願いを背景としている。法律家は、クライアントや訴訟当事者に対して、一定事項を説明する機会がたいへん多い。そのときに、円滑な説明をするためには、条文の基本的な運用方法を会得することが、ある意味で説明方法上達の近道になると考えるからである。 なお、ゲスト講師による講義の可能性があるので、決定次第お知らせする。 【講義範囲は、小規模会社の典型的紛争を含む】 小規模会社のワンマン社長死去後、その相続問題で、会社の社名や主要商品の商標権の奪い合いが、会社内の覇権争いのひとつの側面として顕在化することがある(一澤帆布の例等)。また、踊りやお花の流派の跡目相続をめぐる紛争においても、一方が商標登録して戦う例も、裁判例に多々表れている(花柳流、少林寺拳法等)。このように、町弁にとって必須の知識を、知的財産法Ⅰの講義範囲は含んでおり、実務で遭遇することの多い標識法分野に集中した内容である。SMAP 騒動のように、独立していく芸能人に対して、旧芸能事務所側が独立を阻止するツールとして商標権を用いる場合もあろう(愛内里菜さんと旧所属事務所の裁判では、離脱後の芸名使用禁止の契約条項を無効とする判決がでている)。今年度はこの点も講義する。 |
講義内容 | 1 知的財産法の全体像 2~6 商品等表示の混同類型(1号不正競争行為) 7 2号不正競争行為、商品形態模倣(3号不正競争類型)等の派生問題 8 商標権の取得手続き、1号不正競争類型との並存体制の意味 9~10 商標権侵害 11 並行輸入、水際措置(関税法による輸入禁止) 12 判例生成過程と現在のパブリシティ権の「法」規範 ~ピンク・レディー最高裁判決の射程 13-1 ネット上における商標使用の位置づけ、商標の広告的使用、ドメイン名紛争(17号不正競争類型) 14-1 営業秘密、限定提供データ不正利用行為(4~9号不正競争類型、10号類型、11~16号類型) 15 総括(具体的内容は授業で説明する) |
評価方法 | 期末試験(80%)、授業中の発言(20%)により総合評価する。 |
テキスト・参考文献等 | (テキスト) 特に指定しない(第1回授業で教科書として利用できる文献を複数紹介する予定)。 (参考文献) 『商標・意匠・不正競争判例百選第2版』別冊ジュリスト、有斐閣、2020年 |
科目群 | 展開・先端科目群 |
サブタイトル |